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東京大学先端科学技術研究センター教授西成活裕

アリが渋滞しない理由

私の研究している渋滞学というのは、クルマのみならず、人、モノ、生物などあらゆる流れの滞りについて考える分野なんです。
たとえば、アリの行列を見たことはありますか？彼らも私たち同様、列をなして歩いているわけですが、よく見てみるとアリは渋滞しないんですよ。なぜかというと、車間距離、いや、僕は蟻間距離（ぎかんきょり）と言っているんですけど（笑）、それを詰め過ぎないんですね。渋滞を起こさないような前後の距離を保っている。アリはこの世におよそ2億年生きていると言われていますから、我先にと急いで渋滞を起こしてしまう人間も、彼らから学ぶ必要があるのかも知れません。

｢安全で、エコで、渋滞を起こさない」運転の秘訣

話を人間に戻しましょう。私たちの運転に求められるのは、渋滞を起こさないことに加えて、安全で、かつ環境に良いことですよね。実はこれ、共通する一つの解決策があるんです。それは適切な車間距離を取ること。例えば高速道路でいえば、私は実際のデータを基に、最低40mの車間距離を取ることが重要だと考えています。この距離よりも詰めて運転してしまうと、前の車がブレーキを踏んだとき、それよりも強くこちらがブレーキを踏まなきゃいけなくなる。後続車はそれ以上です。そうなると渋滞が起こる。渋滞は、ブレーキのバトンなんです。
そもそもブレーキを踏まなければいけないシチュエーションを減らせば、当然衝突事故も減りますよね。だから安全にも繋がるし、加減速の少ない運転はエコにも繋がります。車間距離を取って運転することで約4割、ガソリン消費量を削減できたというデータもあるぐらいです。安全で、エコで、渋滞を起こさない運転。これらはバラバラの視点のように見えて、すべて三位一体でつながっているといえます。

渋滞学から見るPASSOのカシコイ機能

パッソには衝突回避支援システム（スマートアシストⅡ）^＊が搭載されています。渋滞学の観点から見ると、その機能のうちの「衝突警報機能」に注目しています。前方車との距離を測れて、それに応じてアラートが出るということは、車間距離の詰め過ぎを防止することに一役買うわけです。レーザーレーダーによって目の前のクルマがどのくらい先にいるかを分かることで、渋滞や事故の減少につながります。

もう一つ、渋滞学の視点から特に重要だと思う機能が先行車発信お知らせ機能です。
「スローイン・ファストアウト」という言葉がありますよね。主にモータースポーツでのカーブを曲がる際に使われる言葉ですが、実は渋滞も全く同じ言葉は当てはまります。つまり、後ろから来るとき（＝渋滞に入るとき）はゆっくり、前から出るとき（＝渋滞を抜けるとき）は早く出すことで、渋滞を成長させないようにできます。
ファストアウトを考えれば、せっかく前の車が出てるのに、それに気づかず止まっていてはダメですよね？だからこそ、先行車発信お知らせ機能は重要ですし、渋滞解消の特効薬になりうるものだと思っています。
これは高速道路のみならず、一般道でも役立ちそうですね。友達とおしゃべりしていたら、先行車が出たのに気付かず止まって、流れを止めてしまう……特に右折車レーンなどもある交差点では死活問題です。その行為がどれだけ経済に打撃を与えて、お父ちゃんの給料を減らしているか（笑）。
そういう意味では、PASSOのカシコイ機能を上手く使って、車間距離とスローイン・ファストアウトに気をつけた運転をすれば、この国への経済効果だって期待できると思いますよ。